日本の石油備蓄(国家+民間+産油国共同、備蓄法基準)は、危機発生前の248日分(2026年1月末確報)から、 2026年9月29日時点の速報値で197日分まで減少した。約7か月で51日分の取り崩しだが、内訳を見ると 減少の大半は3〜5月に集中しており、6月以降はおおむね横ばい(195〜205日分のレンジ)で推移している。 ただし8月下旬からは民間備蓄の減少を主因に200日分前後へじわりと水準を切り下げている。 国家備蓄の放出は7月中旬でほぼ止まり、102〜103日分で高止まりしている状態だ。
資源エネルギー庁「石油備蓄の状況(推計値の速報)」および月次「石油備蓄の現況」を基に、各月末時点(最新月のみ直近速報日)の合計備蓄日数をプロットした。
※合計=国家備蓄+民間備蓄+産油国共同備蓄(備蓄法基準)。1〜8月は各月末値、9月のみ直近速報値(9月29日時点。9月30日時点の値は10月4日の作業時点で未公表)。9月30日時点の値が公表された後に差し替える。速報値は確報と差異が生じる場合がある。なお7月末は、確報(資源エネルギー庁「石油備蓄の現況」令和8年9月)では206日分(国家103日分・民間98日分・産油国共同4日分。四捨五入のため内訳の和とは一致しない)で、速報より3日分多い。
| 時点 | 合計 | 国家備蓄 | 民間備蓄 | 産油国共同 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1月末(危機前・確報) | 248日 | 146日 | 96日 | 6日 | 平時水準 |
| 3月末(速報) | 237日 | 146日 | 85日 | 6日 | 放出開始直後・国家備蓄はまだ未反映 |
| 4月末(速報) | 211日 | 128日 | 81日 | 2日 | 第2弾放出決定・取り崩し本格化 |
| 5月末(速報) | 203日 | 109日 | 92日 | 2日 | 国家備蓄の減少ペース最大 |
| 6月末(速報) | 201日 | 106日 | 92日 | 3日 | 下げ止まり・追加放出なし方針 |
| 7月末(速報) | 203日 | 103日 | 96日 | 4日 | 国家備蓄の放出が事実上停止 |
| 8月末(速報) | 200日 | 103日 | 93日 | 4日 | 下旬に民間備蓄が減少 |
| 9月29日(直近速報) | 197日 | 102日 | 91日 | 4日 | 国家備蓄は102日分で横ばい・民間は9月22日時点の92日分から91日分 |
出典:資源エネルギー庁「石油備蓄の状況(推計値の速報)」「石油備蓄の現況」各月分
2〜3月:危機発生と第1弾放出
2月28日、ホルムズ海峡情勢の緊迫化で危機が始まった。政府は3月16日から民間備蓄義務量を70日分→55日分へ15日分引き下げ、
3月26日から当面1か月分(約850万kl)の国家備蓄原油の放出と、約6日分の産油国共同備蓄の放出を開始した。
国家備蓄は「精製事業者の受入れが確認された日」をもって速報値に反映される仕組みのため、3月末時点ではまだ放出量の大部分が数字に表れていない。
4月:第2弾放出、取り崩しが本格化
4月15日・4月24日に経済産業省が第2弾の国家備蓄放出(約20日分)を発表。あわせて民間備蓄引き下げも延長された。
3月放出分の反映が進み、国家備蓄は146日分から128日分へ、合計も211日分へと大きく低下した。
5月:国家備蓄の減少が最大ペースに
国家備蓄は月内に109日分まで低下し、月間の減少幅は今回の危機で最大となった。一方で民間備蓄は季節要因もあり回復基調に転じ、
合計の下げ幅自体は4月ほど大きくなかった(211日→203日)。
6月:政策の転換点
6月11日、政府は「追加放出なし」の方針を公表。6月26日の中東情勢に関する関係閣僚会議では、
高市首相が赤澤経済産業大臣に対し、8月末までに「エネルギー需給構造強靱化のための総合パッケージ」を取りまとめるよう指示した。
国家備蓄の減少ペースは大きく鈍化し、合計備蓄も201日分で下げ止まりの兆しを見せ始めた。
7月:代替調達の進展と放出の実質停止
政府は7月の原油調達について前年平月比で必要量を上回る見通しを示し、代替調達(中東以外のルート)が本格的に軌道に乗ったことを背景に、
国家備蓄の取り崩しはほぼ止まった(103〜105日分で推移)。同時にナフサ(石油備蓄の対象外)の供給混乱を踏まえ、経産省はナフサ備蓄制度の創設検討に着手した。
8月:高止まりから小幅な切り下げへ
8月中旬(8月17日時点)は合計204日分(国家103・民間98・産油国共同4)と高止まりしていたが、
下旬に民間備蓄が98日分から93日分へ減少し、8月31日時点では合計200日分(国家103・民間93・産油国共同4)となった。
国家備蓄は月を通じて103日分で横ばいで、合計の変動はほぼ民間備蓄側の増減によるものだった。
報道(テレビ朝日系ANN)によれば、6月に指示された「エネルギー需給構造強靱化のための総合パッケージ」は取りまとめられ、
代替ルート輸送の割高費用の支援や、ナフサ精製用の原油を新たに備蓄対象に加えることなどが盛り込まれた。
9月:200日分前後での推移が続く
9月の合計は195〜201日分のレンジで推移した。国家備蓄は9月12日時点で103日分から102日分へ1日分下がり、
以後は102日分で横ばい。民間備蓄は89〜95日分で推移している。直近(9月29日時点)は
合計197日分(国家102・民間91・産油国共同4)で、8月末から3日分の低下にとどまる。
なお、国家備蓄が1日分下がった要因は速報資料には記載がなく、新たな放出によるものかは確認できていない。
今回の石油備蓄放出は、2022年のウクライナ危機対応に続く制度創設以来2回目の国家備蓄放出となった。危機発生から約7か月で 備蓄日数は248日分から197日分まで低下したが、代替調達網の拡大が進んだことで、7月以降は国家備蓄の取り崩しに頼らずに「維持」できる水準に落ち着いている。 一方、8月下旬以降は民間備蓄の減少で合計が200日分前後へ小幅に切り下がっており、この動きが続くかが当面の注目点になる。 中長期的には、総合パッケージに盛り込まれた供給構造の作り直し(代替ルートの支援、ナフサ向け原油の備蓄対象化など)の具体化に焦点が移りつつある。