📋 まず結論

日本の石油備蓄(国家+民間+産油国共同、備蓄法基準)は、危機発生前の248日分(2026年1月末確報)から、 2026年8月17日時点の速報値で204日分まで減少した。約半年で44日分の取り崩しだが、内訳を見ると 減少の大半は3〜5月に集中しており、6月以降はほぼ横ばい(201〜205日分のレンジ)で推移している。 国家備蓄の放出は7月中旬でほぼ止まり、103日分前後で高止まりしている状態だ。

📉 合計備蓄日数の推移(折れ線グラフ)

資源エネルギー庁「石油備蓄の状況(推計値の速報)」および月次「石油備蓄の現況」を基に、各月末時点(8月のみ直近速報日)の合計備蓄日数をプロットした。

250日 230日 210日 190日 248日 237日 211日 203日 201日 203日 204日 1月末 (危機前) 3月末 4月末 5月末 6月末 7月末 8/17 (直近速報)

※合計=国家備蓄+民間備蓄+産油国共同備蓄(備蓄法基準)。1〜7月は各月末値、8月のみ直近速報値(8月17日時点)。速報値は確報と差異が生じる場合がある。

🗓️ 月次推移データ
時点合計国家備蓄民間備蓄産油国共同備考
1月末(危機前・確報)248日146日96日6日平時水準
3月末(速報)237日146日85日6日放出開始直後・国家備蓄はまだ未反映
4月末(速報)211日128日81日2日第2弾放出決定・取り崩し本格化
5月末(速報)203日109日92日2日国家備蓄の減少ペース最大
6月末(速報)201日106日92日3日下げ止まり・追加放出なし方針
7月末(速報)203日103日96日4日国家備蓄の放出が事実上停止
8月17日(直近速報)204日103日98日4日高止まり継続

出典:資源エネルギー庁「石油備蓄の状況(推計値の速報)」「石油備蓄の現況」各月分

🕰️ 何が起きていたか:月ごとの経緯

2〜3月:危機発生と第1弾放出
2月28日、ホルムズ海峡情勢の緊迫化で危機が始まった。政府は3月16日から民間備蓄義務量を70日分→55日分へ15日分引き下げ、 3月26日から当面1か月分(約850万kl)の国家備蓄原油の放出と、約6日分の産油国共同備蓄の放出を開始した。 国家備蓄は「精製事業者の受入れが確認された日」をもって速報値に反映される仕組みのため、3月末時点ではまだ放出量の大部分が数字に表れていない。

4月:第2弾放出、取り崩しが本格化
4月15日・4月24日に経済産業省が第2弾の国家備蓄放出(約20日分)を発表。あわせて民間備蓄引き下げも延長された。 3月放出分の反映が進み、国家備蓄は146日分から128日分へ、合計も211日分へと大きく低下した。

5月:国家備蓄の減少が最大ペースに
国家備蓄は月内に109日分まで低下し、月間の減少幅は今回の危機で最大となった。一方で民間備蓄は季節要因もあり回復基調に転じ、 合計の下げ幅自体は4月ほど大きくなかった(211日→203日)。

6月:政策の転換点
6月11日、政府は「追加放出なし」の方針を公表。6月26日の中東情勢に関する関係閣僚会議では、 高市首相が赤澤経済産業大臣に対し、8月末までに「エネルギー需給構造強靱化のための総合パッケージ」を取りまとめるよう指示した。 国家備蓄の減少ペースは大きく鈍化し、合計備蓄も201日分で下げ止まりの兆しを見せ始めた。

7月:代替調達の進展と放出の実質停止
政府は7月の原油調達について前年平月比で必要量を上回る見通しを示し、代替調達(中東以外のルート)が本格的に軌道に乗ったことを背景に、 国家備蓄の取り崩しはほぼ止まった(103〜105日分で推移)。同時にナフサ(石油備蓄の対象外)の供給混乱を踏まえ、経産省はナフサ備蓄制度の創設検討に着手した。

8月:高止まりと次の焦点
直近(8月17日時点)は合計204日分(国家103・民間98・産油国共同4)。国家備蓄はほぼ横ばいが続き、 民間備蓄側の日々の増減(92〜99日分のレンジ)が合計の細かい変動要因になっている。焦点は8月末に予定される「総合パッケージ」の内容── 特に調達先分散の制度化とナフサ備蓄新設の行方に移っている。

📌 放出フェーズは概ね終了。3〜5月に集中した取り崩しに対し、6月以降は「維持フェーズ」に移行している
📌 国家備蓄は146日分→103日分で計43日分放出、7月中旬以降はほぼ横ばい
📌 8月末が次の節目。「エネルギー需給構造強靱化のための総合パッケージ」発表予定
📋 結論

今回の石油備蓄放出は、2022年のウクライナ危機対応に続く制度創設以来2回目の国家備蓄放出となった。危機発生から半年弱で 備蓄日数は248日分から204日分まで低下したが、代替調達網の拡大が進んだことで、7月以降は取り崩しに頼らずに「維持」できる水準に落ち着いている。 今後の焦点は、危機対応としての備蓄放出そのものよりも、8月末の総合パッケージに示される中長期的な供給構造の作り直し(調達先分散の制度化、ナフサ備蓄の新設など)に移りつつある。